音楽監督より
苦あれば楽あり
“苦あれば楽あり”とよく教えられたが、今の世の中“苦なくとも楽あり”と言ってもおかしくない。
物が豊かなのか、お金と時間があれば楽しいことはいくらでもある。
しかし、本当に心から楽しいと思えることはどれだけあるだろうか。
ある人の説によると、人間の欲求は、物に満たされると次は自己に目が向いてくると言う。
友情や愛情をもとめ、人から認められたい、自己を高めたいという欲求に移っていく。
こうした心の欲求が満たされたときに本当の楽しさが生まれるのではないだろうか。
ただ、この欲求を満たすことはそう簡単ではない。
相手から与えられることもあろうが、本人の努力なくして実現できないことである。
要は本当に心から楽しいと思えることは何か、少なくとも一つ見つけ出し、そのための苦労は惜しまないで欲しいということである。
そんなもののひとつに吹奏楽という音楽活動があると思っている。社会人バンドでは、団員一人一人が皆違った生活環境にいる。
学生もいれば社会人もいる、主婦もいる。それなりに時間の都合をつけ集まってくる。しかも、ある程度の演奏技術がなければならないので練習は欠かせない。
また、活動は演奏するだけではない。練習場を確保したり、コンサートの企画や運営もやる。
こうした苦労があればこそ、世代を越えた人間関係ができ、自己を高めることができる。なにより多くの仲間と演奏する楽しさがある。
所沢ウインドオーケストラも今年で33年目、何度か倒産の危機もあった。“苦あれば楽あり”といったところが実感である。
音楽監督 高見沢 努
音楽監督 高見沢 努 プロフィール
所沢市出身。所沢中学校入学後、吹奏楽部に入部、クラリネットをはじめる。
高校時代にも吹奏楽を続け、自ら編曲した作品を演奏会で演奏するなど活躍する。
県立所沢高校に赴任後、昭和48年から所沢高校吹奏楽部の指導をはじめる。
以後2年間のブランクを除き、26年間にわたり同部を指導し、その発展に大きく貢献した。その間に同部のために編曲した作品は百数十曲にのぼる。
また同部を指揮し、埼玉県代表として関東吹奏楽コンクールに5回、西関東吹奏楽コンクールに6回出場した。
平成12年には悲願であった全日本吹奏楽コンクールに西関東代表として初出場、J.S.バッハ作曲の無伴奏ヴァイオリンパルティータ第2番ニ短調より「シャコンヌ」を編曲し演奏、銀賞を受賞し大きな話題を呼んだ。
その後、所沢市内公立中学校、三芳町内公立中学校の吹奏楽部の指導も行い現在に至る。
2004年には彩の国まごごろ国体秋季大会の9人制バレーボール大会での開会・閉会式の総指揮者を勤めるなど、地域の音楽活動にも積極的に携わっている。
所沢ウインドオーケストラでは、昭和57年の創設と共に音楽監督に就任、当楽団の「顔」として全ての定期演奏会に出演し、当楽団向けの編曲も多数書きながら、団員と共に温かな音楽を創り続けている。